top of page

精油が発泡スチロールを溶かすメカニズム

  • blancheblanche
  • 12 分前
  • 読了時間: 5分


【発泡スチロールとは?】



発泡スチロールは ポリスチレン(polystyrene) という石油由来の高分子樹脂(プラスチック) です。


それを発泡剤(通常はペンタンなど)で膨らませて、空気を多く含んだ軽い素材にしたものになります。






【精油の性質】



精油は有機溶媒(油に溶けやすく、水に溶けにくい性質)をもつ成分の集合体です。


モノテルペンやセスキテルペン、フェノール類、エステル類など、非極性または弱極性の有機化合物が多く含まれています。






【溶ける原理】



これは、「似たものは似たものを溶かす」という化学の原理があります。


ポリスチレンと精油は非極性の性質を持っています。


「非極性(ひきょくせい)」というのは、

分子の中に電気的な偏り(プラス・マイナスのかたより)がほとんどない状態のことをいいます。


そのため、非極性の精油成分(リモネン、ピネン、テルピネン、シトロネラールなど)がポリスチレン分子の間に入り込み、分子間力(ファンデルワールス力)を弱めて構造を壊してしまいます。




結果として、発泡スチロールがドロッと溶けて縮むように見えるんです。


縮んでいるだけなので液体にもなっていません。


個体➡個体のままですし、分子構造もそのまま維持しています。





【実験結果と考察】


■最も早く溶かした精油■


✔️オレンジ・スィート

✔️ グレープフルーツ


今回の実験で最も早く反応があったのは

やはりリモネンを多く含む柑橘系の精油でした。


リモネンを多く含む精油は特にポリスチレンをよく溶かします。


→ 実験では、滴下した瞬間から発泡スチロールがしゅるしゅる溶けるほど。


これはリモネンが有機溶剤としても利用されるほど溶解力が強いためです。


みかんの果皮から絞ったもので反応がなかったのも興味深いです。

やはり、果皮から絞ったものには水分も多く含まれているので、リモネンの濃度が低く、反応しなかったのだと考えます。

実際に柑橘系から精油を取る時は、果皮から出た成分から、水分を取り除く工程がはいります。

油汚れには溶け込むけど、発泡スチロールに穴を開けて溶かすほどではないことがわかりました。(シミにはなっているので、細かい変質はあると思います。)




次いで

✔️バジル精油


予想に反してバジル精油(チャビコールメチルエーテルタイプ)の精油が早く発泡スチロールを溶解じした。リナロール同様に、瞬時に溶けていく感じでしたが、柑橘系と比べると、滴下した表面から溶けていくと言うよりは、中に浸透しながら溶けていくように見えました。


この精油はチャビコールメチルエーテルを70〜90%含む精油で、少量リナロールを含みます。


精油は単一成分ではなく複数の揮発性化合物の混合体ですから、チャビコールメチルエーテル+リナロールの相乗作用が起きたと考えられます。


リナロールがポリスチレン表面への濡れを良くする→ その結果、チャビコールメチルエーテルが内部に素早く拡散

→ 結果として瞬間的に溶けるように見えたのだと考えます。



■やや早く溶けたて穴も大きく空いた精油■


✔️ウィンターグリーン

✔️クローブ

✔️フランキンセンス



ウィンターグリーン精油


柑橘系ほどではありませんでしたが、こちらもかなり反応が早かったし、穴も大きくなりました。


ウィンターグリーン精油に多く含まれるサリチリ酸メチル(エステル類)はベンゼン環でポリスチレンと親和しやすいです。

極性が少なく、有機溶媒に非常に溶けやすいこと、粘度が低く、表面拡散性が高いことで、溶解速度が速く広がりやすい。ただし、揮発も早い。



クローブ精油(主成分:オイゲノール)


構造の特徴➡芳香環(ベンゼン環)+ヒドロキシ基(-OH)

ベンゼン環をもつためポリスチレンと親和性が高く、分子量が小さくて拡散性も高い。

-OH基をもつため、表面への“濡れ”がよいので溶けやすい。

→ 結果:スッと表面に浸透して、すぐに泡構造を崩す



フランキンセンス精油(主成分:α-ピネン、リモネンなど)


構造の特徴➡主成分はモノテルペン炭化水素類

溶解性➡リモネン同様、ポリスチレンの樹脂部と親和性が高い。粘度がやや高いが、油分としてゆっくりかつ確実に崩す。

→ 結果:即効性はやや遅いが、安定して溶かす

α-ピネンやリモネンが表面張力を下げて泡を崩す速さが影響しているんだと思います。



つまり、

芳香環(ベンゼン環)をもつ精油成分は発泡スチロールを素早く崩す。

精油の持つ複数の芳香分子の組み合わせで溶ける速さに影響がある。



逆にゆっくり発泡スチロールを崩すのは

✔ラベンダー・アングスティフォリア


ラベンダーアングスティフォリアは中~極性の性質を持っているので一気に樹脂を溶かす力は弱いです。なので、「時間をかけてゆっくり崩す」となります。

ラベンダー・アングスティフォリアに含まれる芳香分子の中で発泡スチロールを崩すと考えられるのは

リナロール (-OH)

酢酸リナリル (エステル結合)

テルピネン-4-オール

など。



サンダルウッドやローズは全く反応が見られなかったですが、

サンダルウッドはヒドロキシ基を持つ高分子のアルコール類、

ローズはゲラニオールなどのアルコール類で

両方とも極性が高いので非極性の発泡スチロールとは相性が悪いです。




結論


精油を使ったクラフトににプラスチック容器は使わない。


樹脂系の家具なども注意が必要。

床や家具のワックスが剥げたり、トイレットペーパーホルダーなどの素材次第では変形したりする可能性があります。


変形したり、崩れたプラスチックが精油に混ざったりする可能性がある。


× ポリスチレン(PS)

× ポリカーポネット(PC)

× PVC

× ペット(PET、PETE、PE)


〇 ガラス瓶

〇 ステンレス

〇 ポリプロピレン(PP)



 
 
 

最新記事

すべて表示
マジョラム精油

マジョラム(スイートマジョラム)精油は好きですか? 以前、threadでこんな投稿をしました。 マジョラムは「完璧主義を緩める」香り 「~ねばならない」を緩めます。 マジョラムが苦手な人は今はまだ完璧主義が手放せない人かもしれません。...

 
 
 

コメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加
看板.jpg
bottom of page